モバイルゲーミング業界の概要
オンラインモバイルゲーミング業界 - 分析、トレンド、および統計
ゲーミング、とりわけモバイルゲーミングはエンターテインメント分野で驚異的な成長を続けています。未だかつてないほど多くの人々が、ソーシャルなやり取りをしたり余暇を楽しく過ごしたりするための方法としてゲームをプレイしています。
Newzooの推定によれば、モバイルゲーミング業界は2021年には932億ドルを生み出し、前年比で7.3%成長したとされています。この数字をより広い視点から見てみるために比較対象をあげると、Varietyのアナリストによれば2021年の世界全体の映画館における興行収入は214億ドルで、The Business Research Companyによれば同年の世界全体のレコード音楽からの収入は570憶1000万ドルでした。つまり、モバイルゲーミング業界だけで映画業界と音楽業界を合わせた以上の年間収入を生み出したということです。それでは、2022年にゲーミング業界から何が期待できるのか、統計とトレンドを見てみましょう。
モバイルゲーミング業界に関する統計
- App Annieによれば、2021年にダウンロードされたゲームの本数は829億8000万本でした
- App Annieによれば、2021年に消費者がゲームに費やした金額は1160億ドルに達しました
- 2021年8月の時点で、Apple App Storeだけで470万本以上のアプリとゲームを世界中で利用することができました
- Statistaによれば、モバイルゲーミング業界はゲーミング関連の総売上の57%を占めました
- Adjustによれば、モバイルゲーミング業界は2030年までに2720億ドルまで規模が拡大すると予想されています
- Unityによれば、APACはモバイルゲーミング業界で最大かつ最速で成長している地域市場です
- Adjustによれば、、Androidアプリの21%とiOSアプリの25%がゲームです
- Google Playの収益は、iOSのApp Storeの13.2%を上回る19.6%で成長を続けています
モバイルゲーム市場
App Annieの最新データによれば、モバイルゲーミング分野で最も急速に成長しているジャンルはハイパーカジュアルゲームで、このジャンルは2021年のQ3にはダウンロード数で1位となり、世界中でのダウンロード数は35億回を超えました。ハイパーカジュアルジャンルの中ではアクションとパズル、そしてシミュレーションが最も人気でした。
マーケターの観点では、Adjustによると、モバイルゲーミングは全業界に渡って支出されたすべてのユーザー獲得広告費の50%を占め、APACがその内64%で1位でした。比較対象をあげると、2位の業界だったEコマースは僅か16%でした。時間と共に進化革新するモバイルゲーミングの収益性は非常に高く、ユーザー獲得に必要な資金を産み出しています。
1日目から30日目までのリテンションは北米で最も高く、この期間全体のすべてのデータポイントで、世界的なリテンションのベンチマークを1%~2%上回っています。ジャンル別では、ソーシャルカジノのリテンションが最も高く、D30時点ではハードコアの2倍で、ミッドコアとハイパーカジュアルの約3倍です。
2021年にトレンドだったモバイルゲーム
App Annieによれば、2021年にアメリカ合衆国でダウンロードされたモバイルゲームのトップ10は以下のとおりです:
- Bridge Race (Supersonic)
- Hair Challenge (Rollic)
- Count Masters (Ascella Mobile)
- Phone Case DIY (Crazy Labs)
- High Heels (Zynga)
- Going Balls (Supersonic)
- Stacky Dash (Supersonic)
- DOP 2: Delete One Part (SayGames)
- My Talking Angela 2 (Outfit7)
- Sculpt People (Crazy Labs)
2022年のモバイルゲーミング業界の分析とトレンド
IPOとiOS14、法的闘争、そして新しいビジネスモデルが見出しを飾った2021年が、ゲーミング業界にとって話題に事欠かかず記録ずくめな1年だったことは間違いありません。2022年の準備を整えるために、この記事では注目すべき主なトレンドをいくつかご紹介します。
1. プレイトゥアーンの成長
プレイトゥアーン(P2E)は、ペイトゥプレイとより新しいフリートゥプレイ以降、最も影響力があるビジネスモデルです。ブロックチェーン技術に基づいているP2Eでは、プレイヤーたちが仮想通貨ウォレット内で実際に収入を得ることができるだけでなく、いつでも好きなときに自分のアセットを売ることもできます。
フリートゥプレイまたはペイトゥプレイのモデルでは、バーチャル通貨を使ってアップグレードや進行用ブースト、またはキャラクターのスキンなどを購入できますが、この通貨はゲーム外では一切価値がありません。従って、ユーザーがチャーンすれば、この通貨は消滅します。
一方で、P2Eのモデルでは、ユーザーは通貨とリソースを購入または獲得して、他のプレイヤーたちと交換または売買をすることができます。こういったアセットは仮想通貨のためにゲーム外でも売却することができ、そしてもちろんこの仮想通貨は不換通貨に変換することができます。
一部のゲームは既にP2Eモデルを上手く利用しています。事実、キャラクターの売買ができるある有名なNFTベースのアプリは、多くの人々にとって重要な収入源になっています。
P2Eはまだ黎明期にあります(多くの未知な部分と障害があります)が、ブロックチェーンゲーミング企業に莫大な投資資金が流れ込んでいるので、この分野が2022年に大きく進化と革新を遂げることになるでしょう。
2. ブランド構築が最重要
プライバシーに関する変更がモバイルユーザー獲得に新たな課題をもたらしたことは言うまでもありません。ユーザー獲得が複雑になった結果、インストールのスケールとリテンションの改善をするには、アプリを中心にしたブランドとコミュニティの構築が未だかつてないほど重要になっています。
ブランド構築に注目が集まっているので、コミュニティ管理のための仕事が増えるはずです。つまり、ユーザーのエンゲージメントの更なる深化とプレイヤー間におけるより強力な共有体験の構築に特化した人材が必要になるということです。また、開発者たちがこの新たなプライバシー時代におけるパフォーマンスマーケティング活動の複雑さを相殺しようとするので、ブランドマーケティングキャンペーンも増えるはずです。
更に、開発者たちは、インフルエンサーと協力するにしても、YouTubeやTwitchなどのプラットフォームでライブストリーミングをするにしても、オンラインコミュニティを構築するためにより多くの時間とリソースを費やし始めるでしょう。現在の情勢では、自分のゲームに関わりのあるどこかでユーザーのエンゲージメントを維持することが極めて重要になっています。
一部の開発者たちは、既にブランド構築とコミュニティ管理を通じたユーザーエンゲージメントの改善を始めており、2022年は更に多くの人々がその大きな価値に気が付くことになるでしょう。
3. ゲーミングに参入する企業の増加
大手のエンターテインメント企業とテクノロジー企業は、ゲーミング業界の市場規模と成長の可能性に興味を持ち、2021に実験的に参入してきました。
Apple ArcadeとGoogle Play Passはサブスクリプションベースで、ライブラリ内にあるすべてのモバイルゲームを楽しめるサービスです。Amazonのゲーム部門はできてから10年近く経ちますが、2021年になってようやく「New World」というMMOゲームで初めてヒット作品をリリースすることができました。Netflixですら中心的なビジネスモデルから分岐して、世界中のiOSデバイスでプレイできるタイトルを開発しています。そして、TikTokとSnapchatは、ソーシャルメディア系アプリがパブリッシングのための優れたプラットフォームになれることを証明しています。
市場に投入されるアプリは非常に多く、その中でも「アテンションエコノミー」に狙いを定めたアプリは、目立つことによって優位性を獲得し、ユーザーを維持しようとしています。端的に言えば、ゲーミング業界でリーダーになることは、エキサイティングなベンチャーになるということです。
4. ストアのエコシステムにおけるダイナミクスの変化
アプリエコノミーの民主化は更に進んでおり、AppleとEpic Gamesの一件でその流れに拍車がかかっています。
Epic GamesはAppleがアプリ開発者に対して持つ支配力が大きすぎると考えていたため、より手数料が少ないユニバーサルなアプリストアを提唱しました。この一件を経た現在、開発者たちは、App Storeを経由して手数料を支払わなくても、ユーザーを個人のサイトに誘導してサブスクリプションやアプリ内課金の支払いを受けることができるようになっています。一方で、Googleはサブスクリプションの手数料を15%に引き下げました。
また、PC市場でもストアと開発者たちとの間の緊張の高まりが顕著になっています。例えば、Steamはそのプラットフォーム内のゲームで、NFTを含むブロックチェーンテクノロジーの使用を禁止しました。一方で、Epic GamesはNFTと仮想通貨に対する門戸を開きました。
2022年は、世界でも有数の開発者たちの一部に推進されることによって、アプリエコノミーの民主化が更に進み、新たなアプリ配信モデルが生み出される可能性もあります。
5. メタバースの成長
2021年、「メタバース」はメインストリームのバズワードになりました。モバイルゲーム業界におけるメタバースがどのようなものになるかは不明ですが、エッセイストであるMatthew Ball氏が予想をしています。Ball氏によると、メタバースは次のようになることが想定されます:
- 永続的であり、
- 同期およびライブであり、
- 同時使用ユーザの上限を定めることがなく、
- 完全に機能する経済であり、
- かつてないデータとデジタル資産の相互運用性を提供し(あるゲームから別のゲームにクールなスキンを転送できるような)、
- 膨大な数の共同作成者によって作成および運営されているあらゆる種類のコンテンツと体験が集結します
2022年にはゲーミングはメタバースと絡み合い、Fortniteのコンサートのようにより革新的なゲーム内体験を作り出すでしょう。また、RobloxにおけるNikelandなどのように、ブランドも参入して独自のゲーミングワールドを発展させるでしょう。投資家たちからの資金が流入していることから、メタバースのインフラをサポートするためのスタートアップ企業が登場し、リアルなアバターなどメタバース内でユーザーが構築すべきリソースを提供するようになるでしょう。加えて、仮想通貨とNFTが更に発展を遂げ、こういったアセットの新たな利用方法も生まれるはずです。
2022年は、メタバースが一般社会から見てよりはっきりした存在となる公算が高いので、注目すべき空間であることは間違いありません。
6. 業界の統合
ゲーミング業界はこの5年から10年の間に着実に成長してきました。その理由の一端は、アドネットワークや計測ツールなどのゲームテクノロジーのエコシステムをサポートするハイテクソリューションの出現にあります。
ゲーミング業界がツールと共に成熟するにつれ、業界大手各社はサービスを拡大するために強力なソリューションを持つ中小企業の買収を始め、開発者たちがアプリビジネスの管理と成長を行うための1つのプラットフォームになりました。
例えば、ironSourceは2021年に上場し、Luna LabsとSoomla、Bidalgo、そしてTapjoyを買収しました。AppLovinはMoPubとAdjustを買収しました(2020年にはMachine Zoneを買収)。LiftoffとVungleは合併し、GameRefineryとAlgoLift、JetFuel、そしてTreSensaを買収しました。2022年は更に多くのM&Aが起こることでしょう。