ブログ
SubscribeSubscribe

ゲーム市場は急速に拡大しています。たった5年前に910億ドルだった市場規模は、2020年には1600億ドル近くにまで成長しました。これは音楽業界(190億ドル)と映画業界(430億ドル)の市場規模の合計値をさらに倍増させた額に相当します。

市場の拡大と連動して、ゲーム会社に対して様々なテクノロジーを提供する「ゲームテック」が増えています。ビデオゲーム業界を支援するテクノロジー企業はこれまでも存在していましたが、過去10年間でモバイルゲームが流行し、また全体的なエコシステムが拡大したことで、事業規模を大きく成長させました。これらのテクノロジー企業は周辺の事業領域にも次々と進出し、ゲーム市場のさらなる拡大に貢献しています。市場調査会社のNewzooは、このエコシステムの全体像を示したインフォグラフィックを公開しました。このインフォグラフィックに挙げられているのが、後に「ゲームテック」と総称されるゲームテクノロジー企業の数々です。そこでこのページでは、このエコシステムの概要と主な事業者をご紹介します。

ゲームテックの定義

Newzooは、ゲーム開発を行う事業者特有の課題を解決することに特化したソリューションを提供するゲームテック企業と、あらゆる顧客に対して一律的なソリューションを提供するその他の企業とを区別しています。

ゲームテック企業の特徴は、コンソールゲームであれ、モバイルゲームであれ、ゲーム業界に特化したプロダクトを開発していることです。ゲーム業界に特化しているからこそゲーム市場の著しい成長に貢献し、また競争が増すことでさらなる競争を促すイノベーションが生まれるという好循環が作り出されます。

注目すべき傾向として、ゲームデベロッパーにとって、広告収益の重要性が増しているということが挙げられます。この動きを受けて、近年では広告によるマネタイズに関する計測、最適化、自動化などを目的としたゲーム・デベロッパー向けの新規ツールが次々と生まれています。広告収益に依拠するハイパーカジュアルゲームの流行によってこの傾向は加速し、先に紹介したインフォグラフィックにおいても重要な位置を占めています。

それではNewzooのインフォグラフィックを見ながら、ゲームテックのエコシステムについて学んでみましょう。

ゲームテックのカオスマップ

Newzooのインフォグラフィックでは、ゲームテックのエコシステムをまず4つのカテゴリーに整理し、各カテゴリーがさらにいくつものサブカテゴリ―に分かれています。主要な企業に注目しながら、これら4つのカテゴリーを順番に見ていきましょう。

ゲーム開発
ゲーム開発のカテゴリーには、ゲーム制作に関わるあらゆる要素が含まれます。このカテゴリーに、時価総額150億ドルのEpic Gamesの傘下にあるUnrealや同60億ドルのUnityを始めとするゲームエンジン、Epic Gamesから120万ドルの資金調達をしたBlenderやAdobeのSubstanceに代表されるモデリングツール、Easy Anti-CheatやBattleyeなどのミドルウェア、オーディオツール、ソフトウェア管理ツール、ローカライゼーションツールが含まれます。

近年、世界中でモバイル端末の普及により世界のモバイルゲーム人口が急増していることにより、特に後者が非常に重要になってきています。同時に、ユーザー獲得キャンペーンにおいてゲームユーザーをターゲティングする技術は飛躍的に向上しています。これらの要素を土壌として、ローカライゼーションツールが大きく進化しました。

オペレーション
ゲームテックエコシステムにおいて、オペレーションのカテゴリはモバイルゲームに集中しています。Newzooは、GameBenchやBitBarに代表されるゲームパフォーマンスモニタリング、Admob (Google)やironSourceに代表されるアドメディエーション、Facebook Audience NetworkやironSourceのようなアドマネタイゼーション、One SignalやAirshipが提供するカスタマーエンゲージメントに分類しています。

またゲームアナリティクスも重要なカテゴリーです。この分野では、devtodevやGameAnalyticsといった企業の存在が目立ちます。

ゲーム運用のカテゴリーで目立つのは、プラットフォームです。PCゲームではStreamとEpic、コンソールゲームではPlaystationとXbox、モバイルゲームではGoogle PlayとApp Storeが市場をほぼ独占しています。人気ゲームのFortniteの制作陣が2018年12月に立ち上げたEpicは、新規参入でもゲーム市場で成功できることを証明しました。またこのゲーム運用のカテゴリ―には、Google Cloud、Googleが2014年に買収したFirebase、Amazon Game Techなどのインフラストラクチャーとクラウドサービスなどのサブカテゴリ―が含まれます。

グロース
ゲームテックにおけるマーケティング分野のエコシステムも他のカテゴリーと同様に多層的な構造になっています。このカテゴリーで大きな比重を占めるユーザー獲得ではironSource、UnityAds、Facebookなどが主要な事業者です。ユーザー獲得で必須の広告クリエイティブ制作においては、Luna Labs、AppOnboardなどが独自の市場を開拓しています。近年ではアプリストアアプリストア最適化(ASO)も一つのサブカテゴリ―を形成するまでに成長し、SplitmetricsやStoremavenといった企業がより多くのユーザーをコンバージョンさせることを目的としてアプリストアのページを改善するための支援を行っています。

動画配信の爆発的な流行を受けて、この市場を占有するPCゲームやコンソールゲームのタイトルがインフルエンサーを活用する機会が増大しました。またユーザー獲得の自動化とユーザーの関心を引くための競争が激化していることに伴い、モバイルゲームにおいてもインフルエンサーの活用例は増えています。

ユーザー獲得担当者が新規ユーザーのトラフィックを追跡し、またアドフラウドを防止するために活用する広告のアトリビューション計測及び分析ツールも重要なサブカテゴリ―です。この分野では、時価総額10億ドルのAppsFlyerと昨年に2億5500万ドルの資金調達を行ったAdjustの存在が目立ちます。

市場分析
Newzoo、GameRefinery、App Annieに加えて中国のアドテク企業であるMobvistaが2016年に買収したGameAnalyticsなどの企業が市場分析を提供しています。また調査会社のQuantic Foundryはゲーマーのモチベーションについての分析を行っています。

今後の動向

ゲームが日常的な娯楽として定着したことに伴い、ゲームテックのエコシステムは成長の一途を辿っています。映画やテレビといったその他の娯楽市場を凌駕する理由は様々ですが、最大の要因は、コンテンツを無限に拡張できるという特性があるからではないでしょうか(少なくとも理論上は、新規レベルや機能を頻繁に追加して最適化させることで、ゲームを永遠に継続させることができます)。つまり、広告収益またはアプリ内購入のいずれにおいても、ユーザーごとの収益を無限に拡大し得るということです。Netflixなどの映像配信プラットフォームで配信される映画作品の連続ドラマには必ず結末があり、また視聴本数が5本であるか500本であるかに関わらず、規定の月額料金が事実上の収益の上限になっていることとは対照的です。

それでは、ゲームテックのエコシステムにはどのような未来が待ち受けているのでしょうか。これまでと同様に、すべてのカテゴリーにおいて激しい競争が続き、ゲーム開発、ユーザー体験、マーケティングなどの領域で様々なイノベーションが生まれるはずです。他の娯楽形態と比較して、ゲームはよりテクノロジーに依拠しているだけに、テクノロジーの変革による影響もより大きくなります。今後生まれてくる新しいイノベーションが市場の成長をさらに加速させ、デベロッパー、消費者、テクノロジー企業に様々な恩恵をもたらすことでしょう。

Let's put these tips to good use

Grow your app business with ironSource