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ゲーム業界は常に変化の波にさらされています。コロナ禍によるトラフィックの増大と消費者行動の変化を受けて、この傾向はさらに加速しています。

そこでゲーム業界における2020年の注目すべき動向を把握するため、ironSourceとLuna Labsは業界を知り尽くした21名の識者から話を聞きました。

今回は、GameRefinery社のジョエル・ユルケネン氏、Department of Play社のウィル・ルートン氏、Liquid & Grit社のブレット・ノバク氏にゲームのマネタイズ手法やプロダクト設計などについての最新動向を伺います。またゲームにおいてソーシャル機能が強化されていることを受けて、Snapchat社のベン・ウィップス氏の見解も合わせて聞きました。

モバイルゲームの製品及びデザインまたはマネタイズ手法に関して注目すべき動向は何ですか。

Liquid & Grit: ①多様な特典、多様なアプリ内課金パック、アバターなどのように、ユーザー自身がゲーム体験をカスタマイズできるようになったこと、②シーズンやバトルパスの仕組みが進化したこと、③アプリ内課金を始めとするイベント管理の仕組みを通じてユーザーがゲームの終盤のコンテンツへと容易にアクセスできるようになったこと、④レコードレーベルや映画及び実世界のブランドとのタイアップの増加、の4点が注目すべき動向として挙げられると思います。

Department of Play: 予想された通り、ハイパーカジュアル市場の競争が激化しています。必要なeCPIが増大し、LTVを始めとするその他のKPIもシビアになってきています。ハイパーカジュアル開発者は、アプリ内課金と広告モデルを併用したり、より奥深いメタゲームなどハイパーカジュアルはもはや従来のカジュアルまたはミッドコアゲームと比較して遜色ない仕様になってきています。

GameRefinery: バトルパスの普及には目を見張るものがあります。当初はミッドコアゲームに導入されていましたが、最近ではマッチ3ゲーム、タイムマネージメントゲーム、カジノゲームやその他のカジュアルゲームでも採用され始めました。あらゆる種類のゲームとの相性が良く、リテンション率の向上にも貢献するので、モバイルゲームのマネタイズ手法として今後主流となるでしょう。

コロナ禍の影響をどうとらえていますか。

Liquid & Grit:ゲームの利用時間が増える一方で、スポーツやコンサートといったその他の娯楽に費やす時間が減少しています。その結果、ゲームをマーケティング媒体と見なす企業が増えたように思います。

Department of Play:ゲームタイトルの運営そのものには特に影響がなかった一方で、投資需要が低迷したという意味では影響がありました。当社のようなコンサルティング企業の観点としては、収益が向上しているにも関わらず、投資には消極的な企業が増えてきたことが気になります。世界的な不況に陥れば、後期の投資ラウンドにおける資金調達が難しくなるでしょう。

GameRefinery: 3月から4月にかけては、モバイルゲームのコンテンツにも変化をもたらしました。人気ゲームの多くが、無料特典の提供、プレイ時間やイベントの延長、コンテンツの追加などを実施したからです。Pokémon GOのような位置情報ゲームにおいても、ソーシャルディスタンスに適応するために大幅なアップデートを行いました。

Snap: ゲームの機能以外では、消費者行動の変化を目の当たりにしました。友達と遊ぶための新たな方法や、自宅の快適な環境に留まりながらも斬新な体験にどっぷりと浸かることができる方法が求められています。こうした需要を受けて、Snap Gamesでは総利用時間、ユーザー数、VoiceやChatといったゲーム内のソーシャル機能の利用回数が過去最高を記録しました。

異なるジャンルの要素を融合させたArcheroのようなハイブリッドゲームの人気が高まっています。

Liquid & Grit: モバイルゲーム市場に新規参入を果たす方法は2つ。既存のゲームからシェアを奪うか、新しいコンセプトでゲーム市場を拡大させるかです。そのうち前者において、異なるジャンルの要素を組み合わせた場合、シェアを獲得する確率は高まるでしょう。また既に市場に受け入れられているゲームメカニックを採用することで、開発リスクを低減させる効果もあります。

GameRefinery: ユーザーに対して斬新な印象を与えるゲームを制作する上では、異なるジャンルを融合させるのが得策です。またその他のゲームタイトルとの差別化を図る手段ともなります。ただし、相性の良いジャンルを見つけるのはそれほど簡単ではありません。事前に十分な調査とテストを行うことが重要です。

カジュアルゲームやソーシャルカジノゲームにおいても、広告とアプリ内課金を組み合わせたハイブリッド型モデルが採用され始めています。

Liquid & Grit: 参入障壁が低く、ヒット作を出せば高い収益性を見込むことができるモバイルゲーム業界では常にイノベーションが求められています。よってビジネスモデル、プロダクト、機能、プラットフォームは絶えず変化していく。各企業が事業成長を目指して様々な取り組みを行っていく上では変化は必然と言えます。

Department of Play: アプリ内課金モデル型ゲームが動画リワード広告を提供するという動きは5年ほど前から生まれていたので、ハイブリッド型モデル自体は決して目新しいものではありません。ただこれまでとは動きが逆で、広告モデルを採用していた事業者がアプリ内課金にも着手したというのが大きな違いです。

GameRefinery: アプリ内広告の活用は2019-2020年にかけて盛り上がりましたが、現在ではほぼすべてのジャンルでアプリ内課金モデルと組み合わせて活用されています。ユーザー体験を阻害せずに然るべき報酬を用意すれば、プレイヤーは広告視聴さえ楽しむことができます。広告は今後、アプリ内課金モデルを支える有効な手段となるはずです。

ソーシャル機能やLive Opsなど、モバイルゲームにおける注目すべき機能は何ですか。

Liquid & Grit: もちろんゲーム、ユーザー、企業方針によりますが、ここでは一般論を述べます。売上ランキングを上位の企業であれば、簡単には真似できないような機能に巨大かつ長期的な投資をすれば、他社を突き放すことができるでしょう。中小企業であれば、異なるジャンルをまたいだ機能への投資が得策であると個人的には思います。突如として人気を集めるようなゲームアプリの多くは、自社の得意領域だけでなく、なじみのないジャンルをも参考にしていることが多いからです。

Department of Play: ゲームアプリ運営の肝は、長期的なリテンションの確保にあります。live-ops、頻繁にリリースされる新機能などを通じてユーザーがプレイそして課金するきっかけをつくることは今後ますます重要になってきます。またアプリをダウンロードしてから30日後以降のリテンションを確保するためには、プレイヤー同士のソーシャルな関係を構築する必要があります。よってクラン機能、対人戦機能、ソーシャル機能には注力すべきです。Draw Somethingのようなソーシャル的なカジュアルゲームの時代が到来しつつあるように感じます。

GameRefinery: ゲームを他人と一緒にプレイまたはゲーム体験を共有することの重要性が過去数年で一層高まりました。この傾向が弱まることは恐らくないので、どのジャンルであれ、今後の企画を練る際には何らかの形式でソーシャル機能やco-opの要素を取り込む必要があります。

Snap: 拡張現実(AR)の人気が高まっています。先進的な取り組みを行うゲーム開発企業であれば、その動向を把握しておくべきです。Snapではスポンサードメニューの一つであるARレンズの利用時間が18%増え、また当社ユーザーの平均75%が1日1回はARレンズを利用しているという状況です(出典: Snap Internal Data February 22 — March 20, 2020)。

ソーシャルゲーミングの利用率が高まる中、注目すべき関連動向や課題は何ですか。

Snap: 次の4点が挙げられます。

①ゲームの利用時間が増えた結果、ユーザーはカジュアルまたはハイパーカジュアルゲームに代わり、ストラテジー、ミッドコア、ハードコア、コンソールゲームなどにも時間を割くようになった。

②コロナ禍以前からいわゆる口コミは影響力を持っていたが、コロナ禍以後は友人のお勧めがより大きな意味を持つようになった。その結果、情報過多に陥りつつある。

③広告主に対して広告出稿を呼びかける上では、得意領域から逸脱してはならない。例えばカジュアルゲームを主力事業としている企業が、RPGタイトルに手を出すのは得策ではない。

④このような時代環境においては意味もなく楽観的であると誤解されないように注意することが必要。付加価値を提供できるときのみユーザーやコミュニティとのコミュニケーションに参加すべき。今は普通の生活を取り戻し、ブランドへの好感度を高めるために、共感とイノベーションを育む時期である。

2020年中にソーシャルゲーミングはどのような発展を見せると思いますか。

Snap:マルチプレイヤーゲームの人気は今後も続くでしょう。自身のキャラクターまたは自分の自撮り写真からスタンプが作れる「Bitmoji」を通じたオンライン上の交友は、対面では会えない環境下ではとりわけ貴重な体験となり得ます。Snapchatとしては、ゲームタイトルをただ乱発するのではなく、Snapchat上の異なるコミュニティに貢献するような体験を創出していきたい。例えば、このゲームは特定の友達グループと楽しみ、もう一つのゲームは家族で遊ぶといったような使われ方を思い描いています。

要約;
  • 今年最も注目すべき業界動向はバトルパスの流行である。
  • コロナ禍を受けて多くのゲームスタジオがマーケティング戦略への注力度を高めた。また新規タイトルの開発よりも、ゲーム内コンテンツの変更を優先した。
  • 現在の経済環境下においては、長期的なリテンションを確保するためにも、モバイルゲーム開発企業はco-opを始めとするソーシャル機能に取り組むべきである。
  • ユーザーはハイパーカジュアル及びカジュアルよりも、ストラテジー、ミッドコア、ハードコアの利用時間を増やしている。
  • 不慣れなジャンルのゲーム開発を試す時期ではない。
  • マルチプレイヤーゲームの人気は今後も続く。自身のキャラクターまたは自分の自撮り写真からスタンプが作れる「Bitmoji」を通じたオンライン上の交友は需要が高まる可能性がある。

Play Ventures社、Deconstructor of Fun社、Elite Game Developers社、Mail.Ru Game Ventures社と議論するゲーム業界の資金調達及びM&A動向については次回をご覧ください。

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