Blog
ゲーム関連企業への投資動向などについての識者の見解とは

本記事はLuna Labsから転載したものです。

ゲーム業界における2020年の注目すべき動向を解説する5回シリーズの第2回です。前回と同様に、Luna Labsの協力を得て、業界を知り尽くした21名の識者から話を伺いました。

今回は、Elite Game Developersの創業者兼CEOのジョアキム・アクレン氏、Play Ventures社の客員起業家を務めるミハエル・カトコフ氏、Joseph Kim of Deconstructor of Fun社のジョセフ・キム氏、Mailru Game Ventures社でシニア・エグゼクティブ・プロデューサーを務めるイリヤ・エレメイフ氏の4名の見解を伺いました。

ゲーム業界は不況知らずとの見方を示す向きがありますが、これについてどのようにお考えですか。

Elite Game Developers: 確かに不況知らずという側面はあると思います。消費者が娯楽への消費支出を止めることはありません。また若者の間でゲーム愛好者が増えていることも良い兆しであると言えるでしょう。

Play Ventures: 2008年の世界金融危機発生時には、多くの人々が失業したことで増えた可処分時間をゲームに費やしたため、ゲーム企業が過去最高の業績を記録する例がいくつか見られました。当時のゲームは最も付加価値の高い娯楽形態だったのです。ただし、状況は変わりつつあります。マネタイズ方式によっては、環境変化にさらされている場合もあるでしょう。

2008年ごろとは異なり、現在ではサブスクリプションモデルでほぼ無限にコンテンツを提供するストリーミングサービスが数多く存在します。またInstagram、Snapchat、TiktokといったSNSも消費者の可処分時間の大部分を占めるようになりました。

また現在ではフリーミアムモデルのゲームが勃興しています。つまり12年前とはゲーム業界の構造が大きく変化したのです。不況ないしは恐慌発生時には、ゲーム内課金はやや落ち着き気味となる可能性があります。消費者の可処分時間が増加した状況においては、ゲームの進行を速めるという目的で課金することが難しくなるでしょう。

一方でバトルパスを販売するゲームはより大きな成功を収める可能性があります。ユーザーはより多くの可処分時間があるために、報酬の獲得に向けてより多くの時間を費やすことができるので、バトルパスを購入しなかった際の機会損失をより切実に感じるからです。

Deconstructor of Fun: 私も不況知らずという考えに同意します。ビデオゲームは今でも最も費用対効果の高い娯楽形態です。また基本プレイ無料モデルは、一種の価格差別化を取ることで、幅広いユーザー層の収益化が可能です。

Mailru Game Ventures: 「不況知らず」というよりも、「不況に強い」と表現した方がより正確でしょうね。人間の生活に楽しみをもたらすという意味で、ビデオゲームは今や食事に次ぐ必須の存在です。現実逃避のために自己表現が求められるということもありますし、また過酷な時代状況においても感情的な刺激は必要とされます。

さらにゲームは比較的安くそして手軽に楽しむことができます。旅行に出掛けることができず、買い物もできず、節約しなければならない状況では、ゲームは最適化な娯楽となります。

今やゲームは誰もが利用するメディアとなりました。もはやニッチな代物ではありません。「映画視聴者」という表現が不自然であるのと同じく、「ゲーマー」という概念はもはや意味をなさない。ゲームがここまで普及すると、誰もがゲーマーだからです。ゲーム市場は大きな可能性を秘めていると思います。

コロナウィルスの感染拡大とその抑止を目的とした外出自粛に伴い、ゲーム企業に対する投資環境が変化したと思いますか。とりわけスタートアップ企業は資金を調達しにくい状況なのでしょうか。

Elite Game Developers: 少なくとも現段階ではそれほど大きな影響は出ていないと思います。ただベンチャーキャピタルに対してビデオ通話でプレゼンテーションを行うのは難しい。うまくプレゼンテーションができずに、重要な機会を逸するということが増えてしまうかもしれません。

Play Ventures: 資金調達は常に難しいのですが、対面機会またはたくさんの人々と直接的に話し合うことができるカンファレンスがない状況ではとりわけ難しくなります。投資家とまだ関係性を構築できていない、またはまだ名前が知られていない事業者にとっては、各種のイベントがオンラインで実施されるとい状況は好ましくありません。

Deconstructor of Fun: 私も資金調達が以前に比べて難しくなっていると感じています。一方で、資金調達に成功している企業が存在するのも事実です。投資分野の一つとして、または景気後退状況におけるリスク回避の手段としてゲーム業界に対する関心が高まっているように思います。

Mailru Game Ventures: M&A市場は活発に動いており、新しい取引が今でも日々行われています。当社としては、たとえ関係者が一同に集まらずとも、取引を行うことに問題はないとの考えです。商談を成立させるために、必ずしも直接的な対面を踏まえる必要はありません。人間性を理解し、また「化学反応」を得るためには実際に対面するのがもちろん一番ですが、新たな環境に適応しなければならないというのも事実です。現在は専らビデオ通話で商談を行い、そして成立させています。

これらの変化は長期的な影響をもたらすと思いますか。

Elite Game Developers: 個々の関係者同士のつながりはやや希薄になったかもしれませんが、特に支障はないと思います。また事業関係者の増加傾向は今後も続くでしょう。

Play Ventures: ソーシャルディスタンスの習慣がどれだけ継続するか、また経済にどれほどの影響を与えるか次第だと思います。

先ほども申し上げた通り、ソーシャルディスタンスの習慣が広まることで様々なイベントがオンラインに移行すると、スタートアップ企業が自社の存在を示す機会が減少します。とりわけ資金調達ラウンドの早期段階にある企業には不利です。

一方で経済危機下では資金調達額が小規模になるまたは調達が一切できなくなる傾向にあり、投資ラウンドの後半に位置する企業にも悪影響を与えます。また不況時にはリミテッド・パートナーシップ(LP)も打撃を受けます。その結果、資金の調達先は一部の確実性の高い投資先のみに集中しがちです。

Deconstructor of Fun: コロナ禍により、モバイルゲームまたは基本プレイ無料のユーザー層が拡大したように見受けられます。これは長期的な観点から前向きな影響と言えるでしょう。

Mailru Game Ventures: 投資元または調達先は世界中から集まるため、競争はより厳しくなりつつあります。それほどのコストをかけることなく、最高の人材と機会を得られる環境が整いつつあるからです。デベロッパーはオフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッド式の勤務形態を取る傾向にあります。その結果、発展途上の地域に拠点を置く企業でも国際的な人材を獲得できるようになりました。またリモート勤務を特典として提供してきた企業の優位性がなくなることをも意味します。この状況によってリモート環境下における共同作業を飛躍的に向上させるツールや仕組みが生み出され、新たな方法や人材をもたらすのではないかと考えています。未来は楽観視しています。

2020年におけるM&A関連動向で最も興味深いと感じたものはなんですか。

Elite Game Developers: 投資がメタバース(仮想世界)に集中している傾向にあります。ただし、まだ試行錯誤が繰り返されている段階です。メタバースという看板を引っさげた特に面白みのないゲームを開発するスタートアップ企業が今後しばらくは出てくるでしょう。メタバースは確かに現在誰もが注目するキーワードではありますが、結局のところ、最も重要なのはユーザーが楽しむことができるか否か。メタバースであるか否かは実は消費者にとってそれほど重要ではなりません。

Play Ventures: 公開企業または上場を控えた企業のM&A案件が増加しています。これらの大型案件が該当企業の株価に好影響をもたらしていることがこの傾向に拍車をかけています。

この結果、安定した収益を生み出すロングセラーのゲームタイトルを持つ企業を対象としたM&A案件が目立ちました。やや時代遅れとの印象もあるこれらのタイトルは長期的なファンに支えられています。KPIの達成率では文句のつけどころがないのですが、新規ユーザーの獲得には積極的ではないので、これ以上の事業成長は望めないでしょう。

結局のところ、2020年に成立したM&Aの多くはいわゆるドル箱タイトルの獲得を目的としていました。不確実性が増している状況においては賢明な判断だと思います。

Deconstructor of Fun: 2020年いっぱいまではほかにもM&Aが成立するでしょうが、中長期的には減速気味になると思います。需要と供給が釣り合わなくなるからです。M&Aを通じて事業成長を図りたいという需要はあります。しかしながら、買収される側の企業数には限りがあります。中規模の企業層が空洞化している現状においては、M&A市場が回復する前に中小企業が事業成長を実現できるためのエコシステムを確立する必要があります。

Mailru Game Ventures: Peak-Zynga社、Saber-Embracer社、Discord社が1億ドルの資金調達に成功したとのニュースは興味深く受け止めました。ゲーム市場は世界的な業界再編に向けて動いています。大企業は自社に様々な機能を集約させることで、グローバルをカバーする帝国を築こうとしています。現在は独立して運営されている企業の多くは、いずれ大企業の一部となるか否かの判断を迫られることになるでしょう。

最後に今年注目すべきスタートアップ企業やカテゴリーについてお聞かせください。

Elite Game Developers: フィンランドのTraplight社とReworks社には注目しています。 

Play Ventures: 目新しいものという意味においては、クラウドゲームでしょう。またミッドコアゲームを開発するスタートアップ企業が、ゲームエンジンとしてUnityではなくUnrealを採用する事例が増えています。

Deconstructor of Fun: それほど目立つわけではないですが、基本プレイ無料のLiveOps向けのバックエンド技術やテクノロジー基盤では目覚ましい発展が見られます。この領域に多大な投資が注ぎ込まれる可能性があり、この分野に強みを持つ企業は今後優位な立場に立つ可能性があります。

ちなみに当社は機械学習や基本プレイ無料ゲーム向けの新しい技術を異なる業界から取り込むための取り組みを始めたばかりです。

Mailru Game Ventures: 私の中のトップ10動向は下記の通りです。

  • 共同制作及びユーザー生成コンテンツ: クリエイティブ領域、自己表現や体験共有及びバーチャルチャットルーム2.0(Roblox, Avakin Life, Second Life, AnimalJam)としてのゲーム
  • 拡張されたメタを付加したアーケードレースゲーム(Mario Kart, QQ Racing)
  • ゴルフ、テニス、レース、戦闘、釣りといった王道のコンセプトと現代的メタを融合させたもの(Golf Clash, Tennis Clash, Fishing Clash)
  • モバイル用のリアルタイムストラテジーゲームの人気再燃
  • ハイパーコア/ハイブリッド型カジュアル: 手軽かつ中毒性のあるゲームに作り込まれたメタを付加したもの(Archero, Random Dice)
  • 長期のリテンション率を持つハイパーカジュアルゲーム: 最低限のゲームプレイながらもメタやソーシャル機能または大人数での同時対戦機能などを備えたもの(idlers, incremental games)
  • ワードゲーム
  • Co-op PVPや非ゼロサム型の戦闘ゲーム。同じ目的の下で展開されるマルチプレーヤーゲームなど、MMOゲームにおけるレイドに近いMVP報酬付与の仕組みなど
  • ヒット作「 Coin Master」の影響を受けたカジュアルカジノ
  • 独自の知的財産の創出及び整備。またFortnite、PUBG、CoDといった巨大ブランドがモバイルゲームでも存在感を発揮する見込み
要約;
  • コロナ禍にも関わらず、商談や資金調達活動は継続されている。
  • 「メタバース」を構築するスタートアップ企業に対して多大な投資が行われている。
  • 投資ラウンドの後半に位置する企業にとっては資金調達額が小規模になる可能性がある。また不況時にはリミテッドパートナー(LP)もあおりを受けるため、より確実性の高い投資先のみに集中する傾向にある。
  • 2020年に成立したM&A案件はいわゆるドル箱タイトルを対象としたものだった。
  • 中規模の企業が空洞化している現状においては、M&Aの回復には長期間を要することが考えられるため、短期的に見た場合、中小企業自身が事業成長を実現しなければならない。
  • フィンランドのTraplight Games社、クラウドゲーム、ユーザー生成コンテンツ用プラットフォーム、自己表現や体験共有を可能にする仮想世界を構築したゲームに注目。
Let's put these tips to good use

Grow your app business with ironSource